C-15平面-グラフィックデザイン

何かを伝える。企画を考えて,要素を整理して表現する,目的のある平面課題です。

平面を対象とするデザインの分野、グラフィックデザインのカテゴリーです。デザインの課題ですので、目的がある造形になります。こどものおえかきは本来自由にのびのび描くもので、デザインという枠をはめるのは制約になるという考え方もあるかもしれませんが、図工ランドでのこれまでの経験では、目的なり解決すべき課題なりがあることで、こどもたちは新しい視点を獲得し、けっこう張り切って考えます。自分の考えをはっきりとさせ、他者に伝える。小さいこどもにとっては、なじみのない経験なのですが、それぞれの実体験やこれまでの見聞から、まっすぐに向き合ってくれるのです。そうした気持ちに応えるためにも、課題を考える側としては、(他のカテゴリーでもそうですが、)こどもにとって実感を持てる題材を選ぶ、ということが最も肝心なことになります。

さて、グラフィックデザインの課題といえばまずポスターでしょうか。多くの人に語りかけるポスター。その中でも何かを広報・告知するポスターが、最も取り組みやすいテーマです。こんなすてきな場所やイベントがありますよ、来て来て!と人を呼ぶのが役目です。それぞれに自分の好きなものや好きな場所を選んで、それにふさわしい雰囲気のグラフィックを考えるというシゴトです。みんな楽しく描けています。

ポスターでも、マナーポスターなど啓蒙を目的としたものはさらに内容を深く考えて、表現につなげなくてはなりません。大人はかえって頭をかかえてしまいそうですが、こどもたちはまっすぐな気持ちと目線でこたえてくれていて、それが訴える力になっているようです。

文字もグラフィックデザインには大事な要素です。ポスターの課題の場合は、大きめに印刷した見本の文字を写して書けるようにも用意しています。

パッケージのデザインも楽しい課題です。お菓子やペットボトルのデザインなど、こどもに身近な対象を選んで、何度か実施しています。みんな商品企画から楽しんで考えてくれますし、箱の中にクイズや迷路があったり、キャッチコピーも堂に入っていたりと、アイディアがどんどん出てきます。

ペットボトルのパッケージデザインをしたときは、中に入れる色水を作るところから始めます。水遊び的で楽しく、暑い季節に向いている課題です。

おうちで実際に使ってもらえるのが、ティッシュボックスのデザインです。ティッシュボックスにかぶせて使うケースを作ります。商品としてのティッシュというよりは、おうちに置いたときにどんなものが良いかをデザインするというテーマになります。美しさを追求する子たちもいれば、おもしろ工作になる子たちもあります。自分がいいと思うデザインだけでなく、「お母さんの好きな花を描く」とか「ウチは白い感じの部屋だから…」と視点を広げて考えてくれる子もいます。それぞれにおうちで使ったら楽しいことでしょう。

こどもが実感しやすい題材を、あれやこれやと探しています。こちらはTシャツのデザイン。おもしろいデザインがいろいろできます。

このように具体的なイメージの出てきやすいテーマに対して、抽象的な概念を形にするようなデザインは、難しい課題です。「マークのデザイン」という言葉でまとめて、シンボルマークやピクトグラムなども引っくるめ、簡単な視覚的記号で何かを人に伝える要素を考えてもらった課題がこちらです。

こどもたちも日頃いろいろなマークを自然に目にしています。お店や企業のシンボルマーク、トイレのピクト、注意や禁止のサインなど、意味も理解できています。ただ急に自分のシンボルマークを考えようと言われてもピンと来ないですし、新しいマークを作る必然性も実感できなくてあたりまえです。それでもこどもたちはそれなりに考えてくれています。こうしたテーマは課題の出し方や前提にまだまだくふうが必要だなと感じています。

さて、図工ランドに年末の訪れを知らせてくれる、毎年恒例のカレンダーづくりです。講師たちも「今年もこの季節になりましたね〜。」としみじみ。好きな絵を描いても良いですし、かっこいいグラフィックを考えてもよし、干支の動物も人気の題材になります。デザイン的には、けっこうなボリュームとなる日付けの部分をどう使うか、がひとつのポイントです。こどもたちの作る、世界にひとつだけのカレンダーを、毎年楽しみにしてくれているおうちの方も多い課題です。

課題のテーマとして、難しさもおもしろさもあるグラフィックデザインの世界。その広がりの中から、こどもに考えやすい、向いているテーマを、これからも探していきたいと思います。

 

 

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