C-13 平面-自由おえかき

気持ちのおもむくまま,描きたいことを描く「自由おえかき」。図工ランドでは勢いにのってどんどん塗り重ねることができるアクリル絵の具をつかいます。

何を描くのもまったく自由、描きたいものを描くぞ、という課題です。そもそも図工ランドで自由画を実施する意味は何なのか。おうちでも自由に描けるではないか。教室でわざわざ自由画を描く意味とは。これはひとつには、学校でもその他の絵画教室でもそうだと思いますが、皆と同じ時間を共有して描くことで、切磋琢磨する、いろいろな考え方やイメージに触れて刺激を受ける、という意味があると思います。みんなで描く楽しさ、学び合う喜びですね。そこへさらに図工ランドならではのくふうを重ねてきています。みんなの描きたいことを、いろいろな形で引き出していくくふうです。

まずひとつ、図工ランドではここのところ、自由画の際にはアクリル絵の具を登場させています。アクリル絵の具はすぐ乾き、また乾くと油絵のように上からどんどん重ねて描けるところが、水彩とは違う使い勝手です。乾けばどんどん上へ上へと描いていける点が、こどもの描画に向いている画材とされています。ただ、洋服や靴についてしまうと、ほぼとれなくなってしまう点が困りもの。また、学校や幼稚園で使う学童用の水彩絵の具にも習熟してもらいたいと考えています。そこで図工ランドでは主に自由画の際にだけ、アクリル絵の具を出すことにしています。

クレヨンや水彩絵の具の場合には、ある程度計画的に着彩していくことが必要ですが、アクリルの場合は気まぐれにこたえてくれる感じが、特に自由画に向いていると考えます。先に背景の色を思いっきり塗れるところ、間違っちゃった!となってもまた上から描けるところがいいのです。さあ海の絵を描くぞ!というとき、まず思いっきり海の色を塗りたい、そんなこどもの気持ちに応えてくれます。水彩絵の具とクレヨンのおえかきの際に、まず海全部をクレヨンでぐいぐい塗り始める子がいたりします。気持ちはわかる、でもそれをすると上からお魚が思うように描けない!講師もあわてます。画材に慣れてくれば、ごく自然にクレヨンでサカナを描き、絵の具で海の色を仕上げるというような段取りが身につきますが、今日はアクリル。まず大きく筆を動かして、無心に海の色を塗りながら、次に描くものへと気持ちがむかっていく、そんな時間が持てるのが良さだなあと思います。その分、服につかないようにいつもより気をつけるとか、筆をちゃんと洗わないと堅くなってしまうとか、大人向けの対応を求められるところも、ついでに学んでほしいことです。今日は自由画だからアクリル絵の具だねとこどもたちもわかっていて、ちょっと特別な雰囲気を作るのにも役立っているようです。

最近の自由画をご紹介しましょう。スケッチブックに、アクリル絵の具で描いています。抽象画や模様を描くのもあり。もちろん想像の世界や図鑑を見て描きたいとか、思い思いに描きます。図工ランドでは、キャラクターを描いてはだめ、ということも言いませんので、お気に入りのアニメの絵も楽しく描けます。

それに加えて、また別のくふうもしてみる図工ランドです。描くのは自由画だけど、色のついた紙があったらどうかな?という課題もあります。この回では白と黒のどちらか好きな方を選んで描きました。左が白い紙、右が黒い紙。黒い紙を選ぶ時点で、夜空とか、深海とか宇宙などの世界をイメージしていることがわかります。闇はこどもにとって、恐ろしくも興味深い対象で、食指が動くのだと思います。

さらに!激しい色の紙を用意してみた回もあります。黒の他、赤、青、緑の4色から好きな色の紙を選んで描きました。かなり濃い色の紙です。そこはアクリル絵の具、地色に負けない強さを発揮しています。薄く描いて地色を透けさせるとまたそこに雰囲気が生まれます。

紙の色にまずイメージを触発されるということもありますし、できあがりもそれぞれの地色の効果がおもしろく、みごたえのある作品が描けました。余談ですが、こどもに一番人気なのは青です。このときも青い色の紙が最も使われました。いつもの絵の具でも同じで、青い絵の具が一番減ります。クレヨンだと、青と水色はほぼみんなボロボロになっています。海と空の色は、こどもたちの心に響く色なんですね。

今度はダンボールに描いてみました。紙と違って水でふにゃふにゃにならないので、びしっとした仕上がりがいい感じ。このときは展覧会の課題でした。ダンボールを正方形にしてみましたので、そこもまたポイントで、描きたいものにしぼれた絵が生まれてきたかなと思います。ダンボールの地色を生かすのも、ちょっと味があります。

絵巻物にしてみたらどうだろう、とやってみたのが次にご紹介する課題です。1時間半で完成できる長さでないとだめですし、また机の大きさもありますので、それほど長い巻物はできないのですが、やってみました。端からクルクル見ていく、という絵巻物ならではの絵ができたらおもしろいなあ、と考えていたのですが、そうは問屋がおろさない。結果としては、みんな「長〜い絵」と理解して描いてくれたようです。それでもいつもと違った絵が描けています。例えば公園の砂場やブランコ、すべり台。横に並べてどんどん描いていけるので、いつもの画面より遊具のそれぞれがのびのび描けます。長い長い生き物や、長い船、街角の風景などもできてきました。高い塔や、月に届く動物のタワー。縦横もあって、それぞれにおもしろい。

 

白いいつもの長方形の画用紙に、真っ向から向き合って描く、そんな回も実際は多いのですが、時には少しだけいつもと違う道具立てを持ち込んで、こどもたちの中のいつもと違うものを引き出し、またこどもたちがそれにこたえておもしろい絵を生み出してくれる。自由画もなかなか奥が深いのでした。

 

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