C-06立体-形のイメージ

むずかしいこと抜き! 面白いもの,ヘンテコなもの,びっくりするもの,あやしいもの,きれいなもの,おいしそうなもの・・様々なイメージを手で考えて立体の形にします。

このカテゴリーは、立体の純粋芸術のカテゴリーです。「絵画」に対して、立体のアートは「彫刻」という言葉が一般的ですが、刃物を使わない図工ランドで、彫ったり刻んだりすることはないため、長らく「塑造」という名前にしていました。ねんどは身体性の高い、こどもの工作にとって重要な素材ですので、図工ランドでも大切にしているのですが、塑造と言い切ってしまうと、それ以外の素材を使いにくいではないか、抽象彫刻のようなことも是非こどもたちにしてもらいたいが、ねんど限定では幅が狭すぎる、ということになりまして、純粋に形をつくる=「形のイメージ」、という名前に変更しました。自分のイメージした形を、立体で表現する、というねらいのカテゴリーです。

 

さて、このカテゴリーでの基本の課題のひとつが「模刻」です。立体における写生ということになります。そのものそっくりに作ろう、という課題です。モチーフにはいろいろありますが、図工ランドでの大定番は、野菜です。

タイトルは「そっくり野菜」。本物の野菜を手元に置いて、大きさも形も、そして色合いも忠実に再現します。作っておうちに置いておいたら、家族が間違えてしまうくらいそっくりに作ろう、が合い言葉。こういう目的(?)があると、こどもたちは俄然張り切るのですが、中には、「おとうさんが間違って食べたらどうしよう…」と真剣に心配する優しい子も。だいじょうぶ、生の野菜をいきなりがぶっとするおとうさん、いないから。でも皆ていねいに観察し、再現できています。実際あとから、「だまされたよ!」といううれしそうな報告も聞くことがあります。大きい子たちは形も色もリアルさを追求するので、1時間半の中では1つか2つで十分です。小さい子たちの場合は次から次へとねんどをこね、野菜の色を出そうと絵の具を混ぜてどんどん作っていきます。いくつもできあがっていく、その勢いが楽しいのです。

「模刻」ではありませんが、リアルを表現するという点で「ごちそうねんど」も人気課題ですのでご紹介します。ねんどその他の素材を使って、食品サンプルのように食べ物を再現します。みな非常に実感のもてるテーマですので、質感や色、焦げ目などの細部の再現にも熱が入ります。ここでもひとつをじっくりつくる子と、お寿司を作ったら次はオムレツ、デザートや飲み物も、と止まらなくなる子と、どちらもそれぞれに良いと思います。こどもたちも講師たちも、おなかがすいてしまう、食欲中枢を刺激する課題です。

リアルな形を表現しようとするテーマとしては、人間の姿も欠かせません。こちらの課題は「動いている人」。人間の動きを形に表現しようというお題です。

スポーツやダンス、戦う人もいます。この課題では自分でその動きをしてみたり、講師がポーズをとって見せたり、手足の動きや向きを確認しながら作っていくことをすすめます。立体の「写生」は、3次元のものを3次元に再現しますので、3次元を2次元に変換する絵の写生よりも取り組みやすい、と言えます。観察して、表現する力がつきますので、大事にしていきたい課題です。

また、そのリアルを土台に、自分のイメージをさらに広げていく課題もあります。こちらは「空想のサカナ」。実際のサカナをもとにしながら、みな自由に形を作っています。薄葉の和紙を使ったので、発色がきれいです。

そして「鳥脚のオブジェ」。こちらは針金の鳥脚をどんなものにつけたらおもしろいか、考えてもらいました。あやしい生き物がいろいろ生まれています。

トーテムポールも魅力のある題材です。図工ランドでできるサイズは小さくてかわいらしいのですが、ねんどの他に紙の素材も自由に使って造形しています。みんな自由にトーテムを解釈して作っていく、楽しい課題です。

さて抽象彫刻も登場します。ねんどしばりから開放されて、白一色のスポンジを使った造形です。ハサミで切ることのできる材料ですので、ねんどとはまた違った形の作り方ができます。こちらは台を使ってレリーフのようにしました。

白一色で繊細な美しさです。現代彫刻のギャラリーで売っていそう。おうちのインテリアとして飾ってもすてきではないでしょうか。

自分のイメージを形にするこのカテゴリー。扱う素材や加工のしかた、また問いかけの内容に応じて、できてくる造形も大きく変わるのが興味深いところです。人はみなそれぞれにどんな表現方法が自分にはしっくり合うか、探し求めているところがあります。それはもちろん美術の世界だけにとどまるものでもありませんが、図工ランドでは造形に関わる分野で、こども時代に色々な表現方法を実際に体験し、これは好き、これは楽しい、と思える表現を少しでも増やしてもらえたら良いな、と考えています。

 

 

 

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