C-04立体-「もの」のデザイン

身のまわりにある「もの」全て誰かがデザインしたものです。

以前はプロダクトデザインと呼んでいたカテゴリーです。インダストリアルデザイン、工業デザイン、生産デザインなどと呼ばれることもある、デザイン界の王道の領域です。「口紅から機関車まで」と言われるように、工業的に作られるものすべてがその範疇に含まれます。ただし、子どもの造形教室である図工ランドの課題としては、制約もあります。こどもたちが、自分なりの実感やイメージを持てるもの。考えてみたい、作ってみたい、と思えるもの。そういう対象を選び出しています。身の回りにあるものや、こどもたちに人気ののりもの、それから身につけるものも「もの」の範疇ということで、このカテゴリーに含めて登場させています。

まずは「椅子」。腰掛けるという人間の姿勢を支える道具として、こどもにとってもなじみ深い存在であると同時に、デザインの世界でもあまたの名作デザインが生まれてきた領域で、人間工学の分野でも大きなテーマになっている「椅子」。立体のデザインに関わる学生は、美大に入るとまず椅子を作ることが多いのでは、とも思います。椅子といっても用途もデザインも様々、広く深い領域ですので、様々なアプローチでこれまでも何度か課題にしています。

最近の課題では、パイプ椅子を取り上げました。支持体であるパイプのかわりに柔らかい針金で作っていくミニチュアの椅子です。身体をホールドする部分は柔らかくカラフルな素材を使いました。この二つの素材を組み合わせて、みんな自分の好きな椅子をデザインしていきます。こどもたちは実際に眼にしていいなと思ったデザインを再現したり、自由な発想で楽しんだりしています。

素材を変えると、またできあがるデザインも変わります。こちらの課題のときはプラスチックのネットを組み合わせました。曲面を作りやすい素材で、それを生かしたデザインが生まれています。椅子としての強度を確認するため、バービー人形を用意して、ちゃんと座れるかどうかチェックする「バービーチェック」で、盛り上がりながら作っていった課題です。バービー人形の重さも、この椅子たちにとってはけっこうバカにならないのです。またバービーが椅子のスケールを合わせる役割も果たしています。黒一色の素材なので、全体にかっこいい印象ですね。

実際に座れる椅子も作ろうよ、ということで段ボールのスツールを作ることもあります。1時間半の中で完成させる工作なので、基本的な構造は共通で、シンプルなものとしています。

椅子のように広がりのある対象の場合は、このように取り組み方に幅をもたせることで、様々なアングルで取り組んでいます。

さて、工業デザインの花形といえばカーデザイン。のりもの好きな子も多いので、クルマを始めとしたのりものもいろいろ登場しています。図工ランドを始めたばかりの頃は、カーデザインといえばクレイモデルを削ってスタイリングするようなイメージが講師の側にあったため、粘土を使ってやったこともありますが、こどもたちには、形のおもしろさよりもどんな使い方をするクルマなのか、ということの方が楽しいし、アイディアもどんどん出る、ということがわかってきました。最近では、段ボールを使ってざくざくと作るカーデザインをしましたが、作品からみんなの楽しんでいる感じが伝わってきます。

こちらはコミューターのデザイン。ここではコミューターという言葉を「街中をちょこまかと走るクルマ」という意味で使っています。二輪車は自立させるのが難しいので、三輪車にしています。タイヤではなく、球を使ったのも工作的なポイント。やはりこういう課題は男子のテンションが高めです。

のりものシリーズ、こちらは飛行機のデザイン。大学生や大人になると、デザインをしようとすればまず既存のデザインとどう違ったものを生み出すか、がテーマになりますが、こどもたちにとっては、今ある大人の世界のものをまず再現したい(それもできるだけ忠実に)という気持ちが先なんだなあ、と気づかされます。そうやって大人の世界から学んで、成長していくんですね。複葉機やジェット機、スペースシャトルのようなの、などなど、みんないろいろ特徴をとらえて作っていますね。こどもらしいかわいいデザインのひこうきもあって、とってもラブリーです。

 

「もの」のデザインですが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にこのカテゴリーで、これまでに最高に人気のあった「かばん」のデザインです。

講師の説明もそこそこに、それぞれの作りたいバッグやリュックを猛然と作り始めるこどもたち。色や飾り付けに凝る子、入れる道具を想定して細かく仕切っていく子、楽しそうにランドセルを作っている就学前の子、こだわりポイントは様々ですが、みんな自分の「こんなのがほしい!」という気持ちを形にしていきました。

図工ランドの「もの」のデザインは、大人の世界へのあこがれと、楽しいイマジネーションとが交錯する、こどもならではの楽しいデザイン領域です。

 

 

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